院長ブログ

コラム

障害者歯科についての取材を受けました

半年ほど前になりますが、平成301010日の日経新聞夕刊にて、スペシャルニーズ歯科(障害者歯科)についての特集が掲載されました。

実はこの記事には私のコメントも掲載されています。全国版の記事で取材依頼が来たということは、開業歯科医としてこの領域を専門としているのはやはり珍しいようです。

 

記事について


記事はまず「心身に障害のある患者が安心して受診できるよう配慮した歯科が広がっている。」と始まります。受診をためらう患者が多い、専門的に対処できる歯科医院が少ない、といったネガティブなスタートではなく、患者に配慮する医院が増えてきたともとれるポジティブな雰囲気が素直にうれしいと感じました。

最初に、大阪歯科大学附属病院のスペシャルニーズ歯科が特集されています。専門的な行動療法(絵カードやリラクゼーション)と全身麻酔や鎮静を併用した治療方法について触れたのち、実際に治療に訪れた患者さんについて書かれています。

 

身体障害のため車椅子で訪れた女性(脳性マヒか?)は歯の治療を受けるのが10年ぶりでした。

私の医院でも、どこに受診していいかわからなかったと10年、20年ぶりに受診される方も多いです。ほとんどの方が痛みや不調に気づいていたにもかかわらず、やはり受診しにくい状況があるのだと感じる瞬間です。

今回の女性の場合、体の負担を和らげるクッションを背中と診療台の間に挟みポジショニングをしっかりとり、そのうえで担当歯科医師が「口を開けられますか」「治療の際の音は大丈夫ですか」と確認したと綴られています。

女性に付き添った70歳代の母親は「障害への丁寧な配慮があり、安心して通い続けられる」と安堵したそうです。

 

私が以前受診者に対し行ったアンケートでは、歯科医院を選ぶ際に一番気にすることを問うた際、最も多いのは

「障害者歯科専門か」

「障害について専門知識をもって配慮してくれるか」

です。

患者自身またはご家族が、自分の体のこと、家族の状態を適切にすべて伝えるのは困難であり、不安なことだと思います。医療スタッフ側からポイントを抑えた質問と確認を行い、そのうえで個々の特性を把握していくことが重要であり、それによって患者の安心感は増すでしょう。

 

障がいを持つ患者さんが、歯科治療を受けたくても受けにくい状況


大きな大学病院や総合病院、県や市の保健センターでは上記のような施設が整備されてきました。

しかしながら、開業歯科医院ではまだまだ対応できないことも多く、患者が受診を断られるケースも多いと指摘されています。現に香川県内でも、拠点となる二つの医療機関は予約が数か月先まで埋まっていて、必要な時に必要な治療が受けられないという問題があります。

 

私も以前、上記の拠点病院で勤務していました。

同施設でなければ行えない治療が終了したのち、定期的な清掃・検診は地域の歯科医院でと説明し、紹介先の先生の了解も得て、患者さんを紹介しましたが、患者さん自身が受診をためらい、数か月・数年のちにまた拠点病院に戻ってくるというケースが数多く見られました。

 

患者さんは不安なのです。一度患者さんと紹介先の医院で事前に状況を確認し、安心して受診できるようにする必要がありました。

しかしながら、ここで少しの基礎知識があるかないかで、患者さんとの信頼関係が築けるかどうかが決まります。

 

知ってもらうこと、人材を育てること


 

わたしも資格を持つ、日本障害者歯科学会認定医は現在全国に約1000人存在します。認定医の仕事は、当然、障がいのある方の歯科治療を専門的に行うことですが、もう一つ重要なのは、この分野をそれぞれの地域の先生に知ってもらい、知識を得てもらうという啓蒙活動だと感じています。

 

わたしが今回取材を受けたのは、まさにこの部分。なぜこの分野を専門的に行う医院を開院したのかと問われました。障害をもつ方が安心して受診できる歯科医院が増えることを目指し、自分と同じように考える先生が一人でも増えることで、受け入れる医療機関の裾野が広がると考えています。そのためには、わたしたち認定医がしっかりと活動していかなければいけません。

 

「人材育成」

 

障害をもつ方が安心して歯科受診できる将来のために。

 

仲間を増やし、技術を伝え、広がっていくよう努めていきたいです。