「歯科医師が教える認知症予防シリーズ〜口腔ケアから始める脳の健康〜」パート2

最近では訪問歯科診療も広く行われるようになってきたので、われわれ歯科医療従事者が認知症患者さんと接する機会も多くなってきました。


2040年には、65歳以上の7人に1人が認知症患者になると言われています。その約7割がアルツハイマー型認知症。しかし、最近の研究で、アルツハイマー型認知症は予防や改善が可能だとわかってきました。今回はその理由と、どうすれば予防や進行抑制ができるのかをお伝えします。(認知症協会 代表理事 山根一彦先生の講演より)

アミロイドβを減らせば認知症は防げる?

アルツハイマー病の原因としてよく知られているのが、脳に蓄積するアミロイドβというタンパク質です。過去にも、このアミロイドβを減らす薬がいくつも開発されてきましたが、進行を抑えることはできませんでした。

しかし、最近のレカネマブやドナネマブといった新薬は、アミロイドβの蓄積を抑え、病気の進行を遅らせることができるようになったとのことです。それでも、やはり「遅らせる」ことはできても「治す」ことはできないのが認知症と言われています。

すでに脳はダメージを受けている

実は、アミロイドβが脳に溜まり始めるのは、認知症が発症する約25年前からです。そのため、発症した時点では、すでに脳の神経細胞にダメージが蓄積されてしまっているのです。だからこそ、発症してからの投薬でアミロイドβを抑制するだけでは根本的に治すことは難しいのです。

予防がカギ:アミロイドβを「作らせない」「ためない」生活習慣

予防のポイントは、アミロイドβが作られすぎないようにすること、そして作られたアミロイドβを速やかに分解して溜まらないようにすることです。

アミロイドβは、脳内の「アミロイド前駆体タンパク(APP)」から作られます。実は、このタンパク質の量には遺伝的な差もありますが、生活習慣が大きく影響します。例えば、アミロイドβを作る要因は36個もあり、これらを意識することで予防につながります。

予防策:リコード法とは?

最近注目されているのが、リコード法という認知症予防のアプローチです。リコード法では、個人の生活習慣や健康状態を詳細に分析し、認知症のリスクを高める要因を特定して、それに応じた予防策を提案します。

例えば以下のような生活習慣がアミロイドβを蓄積する要因になると考えられています:

• 高血圧
• 喫煙
• アルコールの過剰摂取
• 肥満
• 運動不足
• 糖尿病

こういったリスク要因をしっかりと減らすことで、40%も認知症リスクを下げることができると言われています。リコード法で詳細に知ることも重要ですが、いわゆる不健康になるような要因を自分自身で見つめ直し、それらをバランスよく改善することが認知症予防に繋がると考えられています。

認知症はライフスタイルで防げる!

認知症の発症リスクは、日々の生活習慣の見直しで大きく変わります。早めに対策を取り、健康的な生活を心がけることで、未来の自分を守っていきましょう。