【主張】「オーラルフレイル」と「口腔機能低下症」について
超高齢化社会に突入しているわが国においては、後期高齢者のさらなる増加が見込まれています。
加齢にともなって筋力や身体活動性が低下することはよく知られた事実であるが、と同時に、口腔内においてもさまざまな機能低下が生じてくると言われています。
口腔内においては、通常の「健康」な状態から「口腔機能障害」までの広い範囲の能力低下の途中段階に、「オーラルフレイル」と「口腔機能低下症」が存在するとされています。
平成30年度診療報酬改定において、ライフステージに応じた口腔機能管理を推進する観点から、老化等にともない口腔機能の低下が認められる高齢者に対して、「口腔機能低下症」という新設病名が認定され、口腔機能の管理に関する評価として新設されました。
しかしながらオーラルフレイルの段階に対する対応は地域保健事業や介護予防事業によるものが一般的で、いまだ医療保険の対象外です。
「オーラルフレイル」の具体的な症状としては、「滑舌低下」や「わずかのむせ、食べこぼし」、「噛めない食品の増加」などの感覚的な異常が挙げられます。
それに対し、「口腔機能低下症」は、「口腔乾燥」や「咬合力低下」、「舌・口唇運動機能低下」といった検査機器によって数値的な低下が認められるような症状をともないます。
「口腔機能低下症」については病名がついたことにより検査項目も増え、それぞれの機能低下に対する訓練も行われるようになりましたが、検査機器を揃えることが容易ではなく実際に算定されているケースは少ないです。
また本来であれば、はっきり機能低下と認定される前段階(オーラルフレイルの段階)において、もっと機能向上や維持を促すよう指導していくべきと考えます。
「オーラルフレイル」という新設病名、またより簡便に判断できる診断基準の整備により医療者側からの注意喚起が円滑に行われること、かつ患者自身が自らの機能低下を簡単に理解できるよう説明・指導(冊子など)を充実させていくことが重要と考えます。