みき先生ブログ「朝のひとり言から心を込めて」#8~歯科治療におけるモデリング法~
今日は昨日のブログの続きからお話しますね。
3月7日に開催された歯科衛生士向けセミナー「Bly’」を受講していただいた方に終了後いくつか質問していました。
歯科衛生士Aさんのお答えをシェアさせていただき一緒に考察してみましょう。
質問内容は「これまで様々な小児患者に出会ったと思います。その中でも怖がったり泣いてしまったりで導入が難しかったお子さんたちに対し、治療やケアをスムーズに行うために自然に行っていた行動療法があったと思います。具体的にどの方法を用いていたかを思い出しながら当てはめて説明してください。」というものです。
Aさんからの回答
・ご兄弟で通われていた患者さんで、弟さんが診療室への入室を怖がっており、なかなか入室できない状態でした。ある日、兄の受診の日に一緒に付き添いと言って入室させそばで見せるというチャンスがきました。兄がユニットを新幹線の座席に例えて座ったり電動ブラシを気持ちいいと言いながら楽しそうにケアを受けたりする姿を見たことで、モデリング法を用いた不安軽減ができていたのだと思いました。その後、TSD(Tell Show Do)法を用いてさらに不安を軽減し、スムーズに入室できるようになりました。
みき先生からコメント
・何歳かまでは記載されていませんでしたが、お兄さんの受診時に「今日は自分の番とは違うから安心(=゚ω゚)ノ」という具合で入室できているところから、歯医者さんは何をするところか、椅子に横になって口を開けて歯を触るところとか、痛いことをされるかもしれない(;_;)などの想像はできているように思います。そこで、信頼するお兄さんが楽しそうに歯みがきしてもらっているのを見て、不安が軽減されて自分もやってみたいと思えるようになったのでしょう。不安を好奇心に変えてあげる!このような不安軽減の手法をモデリング法と言います。
モデリング法とは、観察学習、模倣学習とも言われ、モデルの行動を観察することによって観察者の行動に変化が生じる現象です。歯科におけるモデルとしては、リラックスして歯科治療を受け入れ、褒められている患者が適切です。これは、ただ単純に不安を軽減するだけでなく、どのような行動をとればよいかを学習することと、適切な行動には褒賞があることを理解する行動形成にも繋がります。
逆に怖がって泣いているモデルを見せると、不安や恐怖を誘発させ、歯科治療は怖いということを学習し逆効果となってしまうので注意が必要です。
今回のように現実の治療をみせる方法は直接モデリングと言われ、動画や写真を見せる方法は間接モデリングと言われています。実際の臨床現場ではご兄弟やお友達をモデルとした直接モデリングが多いように思います。
ポイントは
・モデルの子供をしっかり褒めてあげること
・モデルの子供にもしっかり協力してもらっていつも以上に楽しそうに振舞ってもらうこと(そうなるようにこちらが誘導すること)
・実際に治療が苦手なお子さんが診察する段階までいけた時は無理せずスモールステップで、できるたびに精一杯褒めてあげること
「お母さんと一緒じゃなきゃ治療台に座れないけど、今日は自分の日じゃないし、お兄ちゃんが新幹線の座席って言ったのがかっこいいからちょっと座ってみよ…」
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この瞬間に盛大に拍手です。先生も衛生士さんもご家族もお兄ちゃんも!!
気分を良くしてもらえたら、次回自分が治療の日でもまずは一人で座るまではできるようになっているかもしれません。そこからまた次のステップに進めていければいいと思います。
明日はもう一つのキーワードTSD法についてお話します。