院長ブログ

コラム

お子さんのお口のトラブル -歯周ポケットへの異物の迷入―

こんにちは、院長の三木です。
今日はお子さんのお口に起こるトラブルの一つ、異物の迷入についてお話しします。

1歳前後のお子さんは行動範囲が広がり好奇心も旺盛になります。
しかしながら、当然何は安全で何は危険なのかという判断はできません。

その結果、本来口にしてはいけない「異物」を口に含んでしまい、歯や歯ぐきに悪い影響を与えてしまうことがあります。

当院で起こった軽症の事例と、わたしが尊敬する小児歯科専門の先生が経験された重症例がありますので、その2例をご紹介します。

<当院の症例>

1歳3か月男児。ご家庭でいつものようにご家族がブラッシングをしていると、上の前歯の裏側に、萌えている歯とは別の歯のような白いものが見えるということで、急遽当院を受診されました。

実際お口の中を見てみると確かに何か白いものが歯周ポケットに挟まっているように見えました。

私の目で見てすぐに、これは歯や骨ではなく異物であると判断しましたが、念のために一枚レントゲン写真を撮影し、歯や骨といった硬組織ではないこと、周辺の骨(歯槽骨といわれる歯を支える骨)にも異常がないことを確認し、ピンセットで慎重に取り除きました。

取り除いたものは、直径4mmほどの真ん中に穴の開いたラバー製品のようなものでした。
ご家族にご家庭で確認していただきましたが、なんの部品かは結局わかりませんでした。
しかしながら、何かの家具の部品であったり、小さいものなので剥がれていたりしてもなかなか気づけない、お掃除しても取り逃してしまう可能性のあるものだと思われます。

今回の症例は幸運なことに、浅い位置でとどまってくれていたことや、ご家族がすぐに発見してくれたことにより簡単に除去することができました。しかし、もっと深く埋まっていて発見が遅れ、そのままの状態になっていたとしても、1歳3か月のお子さんは自分で訴えることができないですから、おそらく異物に細菌が繁殖しそれが原因で歯ぐきに炎症が起こったり、歯がぐらついたりといった明らかな異常が出るまで気づくことができなかったかもしれません。

次にそのような異常にまで発展した症例をご紹介したいと思います。

<エンゼル歯科さんの症例 https://angel-dc.com/ 

3歳2か月女児(実際異物が迷入したのは1歳4か月頃と想定)。神奈川県平塚市にあるエンゼル歯科の佐々木先生が3歳児健診でこの患者さんを診察し、歯ぐきにストロー様の異物が嵌入(食い込んでいるような状態)していることに気づき、数日後に慎重に引き出して除去したとのことです。
レントゲン写真では異物が入っていた部分の周辺の骨が吸収されて失われていることがわかります。

これがいつどのように入ったのか詳細は分からず、およそ2年間歯周ポケットに異物が食い込んでいたわけですが、患児本人からの訴えは当然はっきりするものではないため、発見までに時間がかかった症例となりました。小児歯科専門である佐々木先生でなければ見落としていたかもしれませんし、取り除くこともできなかったかもしれません。除去された異物の写真も示してくださいました。

その後、半年間ほど経過を見て少しの揺れはあるものの噛んだりすることには問題ない状態で落ち着いているとのことです。ここで発見されていなかったら永久歯との萌え代わりにおいても大きな影響が出ていたかもしれません。

この症例は日本小児科学会の傷害速報(一般の方向けの情報サイト)としてネット上でも紹介されています。
詳細はこちらから→ https://www.jpeds.or.jp/modules/injuryalert/index.php?did=122

また、処置の一部始終をまとめてくださっているYouTube動画がありますので、そちらもシェアします。

 


 

<まとめ>

当院で経験した症例も、もしもっと深くまで埋まっていたら、数年間気付くことなく周辺の骨や歯ぐきに多大な影響を及ぼしていたかもしれません。このような乳幼児の健康被害は実は頻繁に繰り返し発生していると言われています。このような事実があるという事を多くの人に知ってもらいたいと思いますし、わたしたちもお子さまのお口の中をよく観察して、異常があったらすぐに対処できるように注意していきたいと思います。

快く資料提供に同意してくださった佐々木先生に感謝を申し上げます。